リコリス・リコイル 12話

いやー、面白すぎです。

リコリス・リコイルの形式美ここに完成せり、といったところで、見ていてスカッとした。次回13話が最終回なのかな、この先の展開も楽しみだ。

 

その作品が持っている形式というものがあって、見ている側はそこに安心感や爽快感を感じたりする、というような事はあるだろう。例えば水戸黄門の「この紋所が目に入らんかぁー」「ははぁぁぁぁ」とか。悪人だったら「そんなもん目に入らんわー」とか言って切りかかってもいいじゃないですか(中にはそういう悪人もいたかも)。悪代官の家の天井の梁に潜んで悪事を見ているが、それ見つからんのかよ、とか(中には見つかって槍で突かれたりしていたかも)。そもそも黄門様一行は正義の行いをしているが、時には賄賂をもらって「年のせいか儂の気のせいだったようだ」とか言い出したりしそうなものの、そんな事はない(さすがにここはブレないはず)、とか。印籠シーンの時間に視聴率が上がるという話があったような気がする。

 

そういうツッコミどころの積み重ねが作品を安心して見れて面白さをもたらす要因の一つに違いない。この12話をもってリコリス・リコイルの形式がついに完成したと感じた。

 

やっぱりまずは、千束のブレないキャラはみていて気持ち良い。「助けられた命で他者の命を奪うようなことはできない」という不殺の誓いをブレない軸として、とぼけた言動、やさしさ、愛情、(戦闘の)強さ、を持ち合わせた多面的で魅力的なキャラ。鬱展開にはならないと信じつつも、毎回、闇落ちしないよね?しないでしょ?しないはず・・というハラハラ感もあり、かなりやられた。

声優の安斉知佳さんがバッチリはまっている。今となってはこのキャスティングが違ったら全く成立しないのではないかと思えるほどに千束のキャラに命を吹き込んでくれた。自分の中では安斉知佳というと響けユーフォニアム高坂麗奈だったので、千束というよりはたきなのイメージだったので最初少し驚いた。また、有名な人気の声優さんという認識ではあったが、あまり具体的な役名が思いつかなかったので、調べてみると「へーこれも安斉さんだったか」というものがポロポロ出てきた。声の使い分けが凄く達者だなという印象で、共通点を見いだせず気づかなかったりしたようだ。それらの中でも千束の役はより生き生きと、より楽しそうにやられているように聞こえる(ただの思い込みだろう)。

 

次に、いい感じに適当な世界観が良い/楽しいと感じる。アンチから、世界観が軽い/ご都合主義、のような叩かれ方もしているように、確かにそういう見方はできるだろう。リコリスの隠密性を演出している程のDAの高度なコンピュータシステムが、最後くるみちゃんに雑魚のようにあしらわれるようなロボ太くんにあっけなくいいようにハッキングされたりするだろうか、USB一つでこうなる?と。

他に11-12話で面白かったのは、電波塔の上を自在に走り回る千束とたきな。ルパンかコナン(未来少年の方)かーい、と爆笑した。落ちるんじゃないかとハラハラしたが、あ落ちないんだね、ふむふむ、と。

あと、真島さんがいつも楽しませてくれる。登場時はただのイカレ野郎で3話後には退場するだろうと思ったけれど、ホントいい感じのキャラになった。いくら撃たれてもしっかり復活するしぶとさ。そして、その能力には驚く他ない。異常な耳の良さを活かして暗闇の中もスイスイ動ける。蝙蝠かい!と。いや、そこまでなら良くある話だが、蝙蝠など比ではなく、ライダーシステムがSLAMで360度マッピングをするが如く、舌打ちの反響で周囲の状況が丸ごと頭に入るという超優秀能力。蝙蝠のような下等生物ではなく人間様にこそなせる技だと納得。しかし、耳が良すぎて千束の至近距離からの銃撃音には耐えられなかった。ううーっと苦しみそれをきっかけに拘束されてしまったが、ベタベタ過ぎて爆笑した。普通に耳が弱点なんだ。普段は耳栓とかしてるのかな。

リリベルの部隊に対峙する千束。集団でマシンガンぶっ放してきたが、モブの攻撃などもはや避ける仕草も不要だ。

事件の幕引きも気持ちよいほどのスムーズさだ。くるみちゃんの活躍は素晴らしい。子供の頃にハッカーに憧れた気持ちが蘇ってくる!「あもしもしぽりすめぇ~ん?」には笑った。この子なしではあらゆる危機がどうにもならなかっただろうという偉大過ぎる存在。くるみちゃんなら何でもありでOKですよ。

 

バカにしたような書き方だがそうではない。大雑把でドストレートな設定・表現は、リコリス・リコイルを楽しむ形式美として昇華したと言えるのではないだろうか。1クールの制約の中で、リコリコの面々の描写に重点を置き、細かい部分は割り切った事は最終的にはうまく噛み合ったように感じる。だから、前に述べたようなアンチの指摘には、それもリコリス・リコイルの面白いところだ、としか言いようがない。そういう粗を受け入れられない人には残念な作品になってしまうだろう。

 

肝心のアクションシーンはスピード感、緊張感が相変わらずの秀逸さだった。アクションシーンは本作の命であり本当にカッコいい。また、たきなの千束を失いたくないという本気さも非常に見どころがあった。完全にプッツンきちゃって「心臓が逃げるぅぅ!!!」は鳥肌ものだった。たきなの感情を表すこれ以上の表現はないだろう。弾切れになっても泣き叫びながら撃つのを止めない。興奮するたきなに穏やかに言い聞かせるシーンは今回一番の見所だった。こういうの好き。みんな成長した。

 

さて、2期もありそうな雰囲気だ。千束の経緯なども大方あきらかになって、事件も解決すれば綺麗にまとまって2期はないだろうと思っていた。あるとしたら真島が捕まらないのを追いかける可能性はあるのかと。

言い忘れたがもう一つの形式美にED曲花の塔に繋がるエンディングがある。千束が闇落ちしないと思った理由にこの形式が最後まで貫かれる事との整合性を気にしていたことがある。大抵のアニメの場合、深刻な話になるとEDがバラード曲と融合するような演出になったりするが、本作の場合は途中から全てこのEDの形を貫く気だろうと感じていた。すると最後はある程度明るい終わり方をする必要があり、話を跨いでの鬱展開はないだろう、という斜めからの読みはあった。

12話の最後、不死身の真島さんが「よっ」と。千束も「よぉ」と返し、花の塔が入る。ニヤっとしてしまった。何と気持ちのいい。

ここまでアラン機関というものがイマイチ良く分からなかった。吉松の行動原理もモヤっとしている。今回リリベル側の司令官が口にしていた「上層部」、色々と謎めいたままな部分は多い。リリベルも活躍がほぼなかった。アラン機関をぶっ潰したいという真島の思惑と、吉松絡みでアラン機関を追うというような思惑が合致して見かけ上組むような形になれば面白いし、そうでなくても面白い展開にはなりそうだ。

 

最終回、どうなるか。