君たちはどう生きるか。の感想

宣伝0商法にまんまと引っかかって、7/24(金)に鑑賞。
直後に書いたが半月寝かせてしまった。

無骨な、エンターテインメント性のほぼない児童文学という感じのもの。お爺さんの宮崎駿が、戦時中に生きる少年の鬱屈した精神があの世に行ったりこの世に行ったり冒険する中で成長していく様を、淡々と地味でシンプルに描いたような作品。私のようなおっさんにとっては面白みも感じられず、一般ウケも悪くてすぐに失速して大コケするだろうと思ったが、刺さる人には刺さっているようで滑り出しは順調のようだ(ただ、半月経ってみれば、ロングランしそうな雰囲気ではないようだ)。

感想は、面白くはなかった。表面上は子供向けの児童文学でエンタメ性もなく、おっさん向けではない。ジブリに思い入れはなく どちらかというと苦手。事前情報があったら行ってなかっただろう。


以降、賛否両論のレビューで見かけがちな内容について、ダラダラと書いた。


映画レビューとしてwebで見られる評判としてよく見かけるものに、「良く分からない」「理解が難しい」というものが多いようだが、そもそも具体的にどこをどう分からなくて理解できないと言っているのかはぼやっとして良く分からない。特段の理解を要するようなものか?と不思議に思う。まずは、多少の不思議や意味不明なども含めてシンプルに捉えれば良いようなものではないかと思った。

〇〇の理由が語られない、〇〇が何を意味してるのか分からない、不思議の答えが分からないと居ても立っても居られない という感じなのだろうか。そういう人にとっては確かに辛いだろう。わざとらしくセリフで語られる事はないし、そもそも不思議についての説明はない。観ている人の想像の余地が大いにある。映画観てそんな事考えたくないという人にとっては低評価になりそうだ。でも、不思議の国のアリスを見て、あれは意味不明、これは矛盾だ、などと騒がないと思うけれど、それと同じことだろう。そして現実であなたの身近な人の起こす行動の本心も分からない(直接聞ける可能性はあるが)。映画なら分かる必要がある?

あとは、ストーリーとして起承転結がしっかりとしたエンターテインメント性を重視する人にも反感を持たれている様子はある。地味なイベントが連なりドラマチックな展開もない本作は受け入れがたい、手抜きだ、という理屈は分かる。
自分もどちらかというと、この部類に入るかも知れない。今のアニメ映画はシナリオや映像表現の質が凄く高まっており、どの映画を観ても(少し言い過ぎ)、ほんと感動的で面白いと思う。そうした今時のアニメと比べると最近のジブリ映画ってそんなに面白くないな、と常々思っている。ただ、内心、最近のアニメは洗練され過ぎてしまっているのだろうなとも何となく思っていて、この映画のようなエンタメに毒されていないような作品があるのは貴重なことだな良かったなと観ながら思った。

分かる/分からないの話としては、キャラに宮崎駿や関係者とその人生を投影するような観点もある。確かに、アニメで直接見せていない裏設定を考察する楽しみは大いにあるだろう。裏設定の考察の楽しさはエヴァンゲリオンの活気を思い出すし、作家自身との対比なんてことができるのは巨匠の持つ深みあってこそで素晴らしいことだ。一粒で二度おいしいというやつだろう。しかし、そういう考察ができないと楽しめない、というのは何か違う気がする。


児童文学だということ。単純に、大人が心から楽しめる訳もなく(楽しめる子供向け作品はもちろんある)。例えば終盤のお化けがたくさん出てくるような展開はいかにも子供向けだろう。君たちはどう生きるか?大のおとなに向かって問うようなことではない(宮崎駿からしたら殆どの客は子供のようなものだが)。

この映画は、子供を連れて行ってはいけない、ような言い方を見かける。本当か?「子供と行こうとしている人はクレヨンしんちゃんに行ってください」と、あるyoutuberは言った。それはエンタメを求める前提では正しいと思う。ただ、子供がフラットな心で、昭和の滅びつつある妙な精神性、妖精なのか人間なのか分からない婆や、胡散臭くて気持ち悪いアオサギと地に足のつかないようなあの世の冒険を体験するということは、エンターテインメント性が高まった高品質な作品があふれる中で、感動スイッチを気持ちよく押してくれる作品が当たり前になった中で、このような作品は宮崎駿にしか作れないだろうと考えると、詰まらないという思いとは別に、感じるところはあった。

宮崎駿がどういう気持ちで作ったか分からないが、子供に見てもらいたい気持ちは強いのではないか。自分だけの創作意欲を満足できればよかったのか?エヴァをリスペクトして考察好きな大人に向けた作品?しっくりは来ない。子供向けの作品を子供が観ることを阻害するようなミスリーディングは頂けないと思う。見た後に「?」となるだろうこと含めてまず子供が観る映画なのではないか。


まあしかし、やはりジブリ作品はつらい。感情移入する先もなく、変なオウムが沢山でるのを見てるのは辛い。寝てないつもりだったがSNSで記憶にない筋書きを見るに、終盤脳は死んでいたようだ。

主人公が階段上るシーンは動きはダイナミックで面白いが何だか大げさに感じてしまうし、妖怪のような7人の婆さんは見ていてきついし、アオサギが飛翔から水面に着地する一連のシーンは羽を仕舞う細かい仕草の表現など凄いと思ったのも束の間、あの声を聞いた瞬間失笑してしまうというか、あれ誰の声なんだろう?キムタクがダミ声出しているかと想像していたが萎えの極致(菅田将暉だった)。ナウシカのラストを形を変えて表現してきたであろうテーマにも、あまりそそられることもなく。

何でジブリを観た?と言われそう。自分でも今となっては不思議に思う。何で?

問題の宣伝0商法について。
何で観たか。ほとんど事前情報が無い中で、ここ最近見ていた漫画版ナウシカ未来少年コナンのアニメが面白かったものだから、宮崎駿の作品が気になってしまったこと。冒険活劇というワードに淡く重い期待をしまったこと。冷静に考えれば回帰などあろうはずもなく。

改めて考えるとこの商法はヒドいと思う。勝手に期待して勘違いしたのはあんたでしょ。と言われたら返す言葉もないけれど、それって詐欺師のセリフでそんなこと言わないと思ってますけど、普通に宣伝されていたら行かなかったと思う。この手法は不誠実と感じる。何も知らない状態でハズレる事すら受け入れて楽しむという余裕があれば良いのだけど、世知辛い理由から事前に見定めはしたい。本でも何でもタイトルだけでなく目次や粗筋をみて面白そうか見定めて買う。何も知らない方がワクワクが大きいと言うけれど、一理あるとは思うが、面白い作品なら予告や粗筋をみてもワクワクするし、なんなら原作で結末分かっている作品のアニメ化が今年一番の楽しみだ。そもそも事前情報が無かった事が、より多くの失望も生んでしまっている訳で、賛否が分かれている大きな原因だろう。どういうつもりの戦法だったのか本心を聞いてみたいが、多分言えないだろう「宣伝したら客が来なくなると思ったらから」とは。
かなり残念。

これが最後というのは寂しい。
次は面白いものを作って欲しい。ご年齢からすると短~中編がやっとかもしれない。自己表現はやり切ったということで、あとは子供向けのかわいらしいのとか作ればいいと思うんだけど無理なのかな。